「私たちがつくっているのは、精密機械なのかもしれません。一本、一本のシャフトに、ひとつひとつの素材にそして一回一回の工程に拘りを貫いています」
埼玉県入間市に本社工場を構えるFSPの目指しているシャフト、それは究極の品質と性能だ。カーボンは、低弾性から高弾性まで、厳選された高品質素材を幅広く使用し、プライ(切片)については、通常の倍以上に及ぶ。それらは様々な部分へ何層にもわたり巻かれモデルやスペックの多様さによりさらに複雑になっていく。
そして、多方向からも硬度が同じになるよう何度も検証し、研磨を繰り返して限りなく正確な真円を目指している。
それは、どこまでも繊細できめ細かく、熟練した職人の技術でなければ、本当に納得できるものにはならない。頑なに国内一貫生産と手造りに拘る理由はここにある。
その同社のフラッグシップモデルが、このほど投入された『MX‐9』(6万円)。新製品は、剛性と反発性能を高めた“直進性に優れる曲がらない”仕様で、高弾性カーボン比率を飛躍的に高めているのが特長的。
具体的には1㎜幅のカーボン帯を5方向に編んだ5軸組布をフルレングスで採用。また、手元部を4軸構造とした世界初の9軸設計となっている。これにより、50g台(SR、R*Sは62g)ながら、インパクト時のたわみやつぶれが減少。つまり、変形時の復元が速いので、反発性能にも優れるということだ。
先端部にはさらに東レの炭素繊維T1100Gカーボンをハイブリッド。先端がブレずにしっかり感が得られる仕組み。
ただ、しっかりさを手のフィーリングで感じてしまうと、どうしても力みがちだ。そこで『MX‐9』では、カラーリングに工夫を凝らしている。ダークブルーをベースに手元部をホワイトにすることで、視覚的に“軽さ”を感じさせるデザインを採用。
設計・開発にあたった小林光昭会長に話を聞いてみると、
「実際の重量は重いんだけど、フィーリングが軽く感じられシャフト作り――。当社はそこをずっと目指していて、2年の歳月をかけてようやく完成に漕ぎつけたのが『MX-9』になります。苦労した点ですか? やはり、人が打つフィーリングを形にしていくのは難しい作業ですね。手元に鉛を入れてカウンターバランスにするのは簡単ですが、そうではなく、シャフト本来の性能により、そこを表現したかったのです。トッププロほど、“重さがあって軽く感じる”フィーリングを大事にしているものです。『MX‐9』でそこは表現できたと自負しています」
工夫と情熱、そしてこだわりを重ねて、真っ直ぐにシャフトと向き合うFSPの姿勢を垣間見た。