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システムズ

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2024/03/20

ゴルフ民主主義の世界をweb3の機能で実現したい

リンカーンが唱えた有名な台詞「人民の、人民による、人民のための政治」の「人民」を、そのまま「ゴルファー」に置き換えて、ゴルファー主導のコミュニティをつくりたいと話すのはIT企業の老舗、システムズの小河原隆史社長である。Web3・0の機能を業界に持ち込んで、新たな世界観を提唱する。だが、それはどういうことなのか?
同氏が「これを進めるには哲学が必要です」と話すように、Web3・0の世界観は社会改革を伴う可能性に満ちている。異業種参入の挑戦を詳しく聞いてみよう。 (聞き手・片山哲郎)

-まずはゴルフ業界の皆さんに、システムズとはどんな会社なのか、そのあたりからお願いします。

「ありがとうございますッ。まず自分のことを話しますと、1973年生まれの49歳です。趣味はなんといってもゴルフですが、ほかにトライアスロン、読書、あとは蕎麦を打ったり魚を捌いたりと、」
-多趣味なんですね。で、会社は?

「1969年の設立で54期目を迎えております。IT業界には大手や他の資本が入ったところが多いんですが、当社は数少ない独立系の会社でして、社員は260名、年商は当期見込みで31億円。東京本社のほかに大阪、茨城に拠点があって、開発にはマンパワーが必要なので中国、ベトナムとも十数年取引をしています。取引先は大手中堅企業と幅広くて、元は日立製作所さんの下請けで五次請け、六次請けみたいなところから始まっています」

-六次請けって凄いですね。

「あのぉ、IT業界っていうのはゼネコンと似たような多重下請け構造なんですね。高度成長期に顕著でしたが、銀行のオンラインシステムや火力・水力発電所といったように大型の社会インフラを大手企業が引き受けて、そのシステムの一部をいろんな会社がこなすわけです」

-創業者はお父さんですが、お父さんも技術者だったわけですか?

「いえ、父は技術者ではなかったんです。創業期はコンピュータに入力するためのパンチカード、つまりプログラマーがプログラミングしたものをパンチカードに穴を開ける、そのパンチャーさんを沢山雇ったのが創業期の姿です。当時は電子計算機の登場期で、これからはそんな時代が来るという読みの中で徐々にシステム開発の領域に入りました。

創業から20年ほどは大手の下請けで業績を伸ばしますが、1991年にバブルが崩壊して社会全体が停滞する。当然、国から大きな仕事が出なくなって、当社も仕事が取れずに凋落する。このあたりで多くの同業他社が消えていきます。そこで模索したことは、下請け仕事をもらうんじゃなくて、大手の元請けにならなきゃダメなんだと。ここへの転換が大きなポイントでした」

-その後ITバブルの崩壊やリーマンショックがありますね。

「そうなんですよ。業績の推移を棒グラフにまとめましたが、23期のバブル崩壊でどーんと落ちて、そこから脱・下請けを目指しますが、33期目にITバブルの崩壊、39期目でリーマンショック、その3年後に東日本大震災……。ですから当社の一番底は震災の翌年、43期目がもっとも苦しかった時期になります」

-小河原さんの入社はいつですか?

「1999年4月、SE(システムエンジニア)として入りました」

-ITバブルの崩壊前夜ですね。

「当時は脱・下請けを模索するも、そもそも営業力がなかったし、ようやく仕事を取ってきても開発のマネジメント力がないから失敗する。そんなことを繰り返して、利益率も1~2%しかありませんでしたが、以後、どうにか盛り返して、当期は利益率も7~8%、過去最高益が見えています」

-勝因は何ですか?

「45期目あたりから実を結び始めたマイグレーション・ビジネスが大きかったですね。当社の仕事は大きく4つありまして、取引企業のシステムに関わる運用保守と、ITコンサル、ソフトのシステム開発に加えてマイグレーションなんですが、これが業界で大きな評価を得ています。
当社ではシステムの『引っ越し』と呼んでいて、取引企業が新しいシステムに移行するとき、過去の古いシステムを生かしながら無駄なくシフトするビジネスのことで、」

………つまり?

「スマホなんかは古いハードから新しいハードに移行するときに変換ツールがありますので、誰も意識せず新しいモノに変わっていますが、企業の業務システムには変換ツールがありませんので、古いハードからクラウドに移行するときにゼロから作り直すんですよ。それでシステム会社が2億円の請求をするとします。だけど古いモノを捨てるのはもったいないから変換して生かす、生かせば5000万円で済みますよ、というのがマイグレーションです」

 

創業半世紀の老舗だからできる

-1億5000万円分の差額は人件費ですか? システム開発のコスト計算は基本的に人工代ですね。ひとつの案件を達成するのに何人を何時間拘束したか、その合算?

「基本的にはそういう考え方でけっこうです。今やクラウドの時代になって、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)が代表的ですが、みなさんクラウドに移行している。その移行期にマイグレーションがハマって業績が伸びているんです」

-アマゾンは物流会社だと思われてますが、実は違って、今や世界最大のクラウド・カンパニー。

「おっしゃるとおりです」

-クラウドって「雲」ですよね。天空に雲がふわっとあって、そこにいろんな会社の情報システムが連なっている。そんなイメージですか?

「まぁそうです。企業にサーバーを置かないで、クラウドに置けるというイメージです」

-御社もクラウドを持っている?

「いえ、持ってません。当社は取引先のシステムをAWS等のサービスに持っていくという仕事です。で、ウチがこの領域に強いのは、この業界で創業半世紀以上の会社はかなりの老舗で、我々は古い仕組みを知っている数少ない会社なんですね。いわゆるIT企業って星の数ほどありますが、新旧双方の仕組みを理解して生かせる会社は5社ぐらいしかないんですよ。大半のIT会社は、わからないからやりたくない、だからゼロから2億という話になる」

-要するに、クラシックカーを下手にいじって壊しちゃって、おまえ弁償しろよって言われたくない。

「上手い表現ですねえ(笑)。だから『新車を買いましょう』って話になるんですが、当社はクラシックカーをきちんとケアしてバージョンアップできるわけですよ。だからこの業界では『マイグレーションといえばシステムズ』だと。ひとつのブランドになっているんです」

-で、その御社がWeb3(ウェブスリー)をゴルフ業界に持ち込んで新ビジネスの立上げを狙ってるわけですが、そもそもWeb3って何なのか。次にこの点を伺います。

「わかりました。まず、世の中がWeb1からWeb2に移行したときに、当社はこれに乗り遅れたという後悔があったんですね。なので今回はWeb3の世界観をどこよりも早くゴルフ業界で実現したい、そんな思いが強くあります。これまでの経緯を簡単に話すと、Web1の世界観は1990~2000年に起きたインターネットの黎明期で、膨大な世界の情報を『読む』時代の幕開けです。各社挙ってHPを設けたり、ウィキペディアに代表される集合知を含めて情報源が格段に増えた。

その次に現れたWeb2は、2000~2015年までの変革でWeb1の『読む』に『書く』が加わります。情報を受けるだけではなく、自ら発信する時代になって、各種のSNSやECサイト、インターネット上で売り買いできるマーケットプレイスが現れます」

-大衆に埋もれていたイチ市民が、自我を世界に発信できるようになった。サイレントマジョリティの承認欲求が爆発して、回転寿司の問題を含め人心が一変した。

「で、Web3なんですが、これは『読み書き』に『所有』が加わる時代だと言われています。もう、絶対に大変革が起きる直感はあるんですが、事例が少ないから誰もイメージできない状態なんですね。その中でふたつあげるとNFT(非代替性トークン)とメタバースですが、NFTを簡単に言うと、ブロックチェーンによって唯一無二のモノであることが証明される技術のことで、」

-ブロックチェーンの概念は「相互監視」でいいですか? ロジック的には複数の人が、ひとつのモノの真贋を相互監視というか、相互の取引で連鎖的に証明する。

「はい。イメージ的にはそれでいいと思います。今あるNFTの世界はデジタルアートが数千万円の価値をつけたり、その価値の瞬間的な売り買いで儲ける投機目的が目立つので、Web3が本来持っている社会的に意味のある機能としては使われてない気がします」

-まずは投機価値で注目を集める。

「現状はそんな段階でしょう」

-ビデオデッキの登場期と同じかもしれませんね。町の電気屋さんがポルノビデオを付けて販売した。人間の欲望を刺激して広げる。

「アハハハ。それは言えますね。ですからWeb3の世界をNFTの視点で見ると、今は投機的なことで注目を集める感じだと思うんですよ。それは本来のWeb3の機能じゃないし、『世界にひとつ』ってことをブロックチェーンで証明して、その価値が上がりますよ、下がりますよってことばかり注目されている」

Web3の目指すことは?

-もうひとつのメタバースは?

「メタバースについては、現実世界のことを仮想世界に構築するデジタルツイン(双子)という言葉があるんですが、例えば製造業の話をすると、まずはデジタル上で自動車の開発を行って、デジタルでリアルと同じ環境を作ってあげ、効率的な開発をするという感じでしょうか」

-だけどそんなことはFEMの衝突実験とかでやってますよね。

「似てますね。今はそれの延長にある段階だと思います」

-メタバースの世界観は、コロナで伊勢丹に客が来なくなった。客のアバターを作って洋服を着せて、気に入った服が3日後に届く。僕のリアル感はそのあたりが限界です。

「今はそれぐらいしかないんじゃないかな、と思いますよ。10年後にはまったく違う姿になるでしょうが、現状は服を買うレベルじゃないですかね。あと、サッカーのクラブチームを応援する機能として、Web3の仕組みを使った資金集めの例があります。トークンを、クラウドファンディング的に一人1万円で1000人なら1000万円集まりますよね。それで遠征用のバスを買ったりしてチームが強くなれば、いろんな方法でファンに還元される仕組みをWeb3上で行ってます」

-現金で1万円を払うんですか?

「そうですね。現金でクラブチームが発行するトークン、つまり仮想通貨を買うんです」

-現金渡せばいいじゃないですか。

「例えばクラブチームが優勝したら1万円で買ったトークンが、2万円とかに上がる可能性もあります」

-誰から2万円もらうんですか?

「買いたいという人からです」

-う~ん……。

「メルカリがあるじゃないですか。かつて自分が使ってた不要な物、放っとけば物置に眠ってるガラクタに流通性を与えて生き返らせた。メルカリの仕組みがあるから無価値が価値になるわけで、Web3っていうのは流通性があって、」

-でも、それってマーケットプレイスの話ですよね。マーケットプレイスはWeb2の世界ですよね。

「そこはそうなんですが、Web3の本質的な話をすると、Web2との最大の違いは中央集権型の仕組みじゃなくて『分散型』の仕組みなんですよ。SNSは一見、個人が自由に発信しているようで、フェイスブックとかの管理下にある。

Web3の本質はまったく管理されない世界観で、Web3で実現できる社会的価値は3つに分けられると言われていて、ひとつは『組織化』です。例えば400年前の東インド会社から続く株式会社の概念がありますが、これは社長がいて役員会がある中央集権型ですね。それがなくなって分散型になると、社員が経営参加する組織にできます。

もうひとつは法定手続きの自動化で、例えば土地の売買だと司法書士が介在して売買契約書に署名・押印する。司法書士への支払いも発生するし、いろんなコストが掛かってくる。でもブロックチェーンで証明できればこれら一切が不要になって、スマホで売買が完結する。低コストで流動性が飛躍的に高まります」

-ペーパーレスの話とは違う?

「はい、まったく違います」

散歩をすればお金がもらえる

-3つめのメリットは?

「評価経済、体験の価値化です。これまで『人』に対する評価は貯金や土地を持ってるとか、資産に対する評価でしたが、Web3の世界では購買や健康、行動や交友関係といったように、その人の評価が重層的になってくるわけです」

=それ、中国がヒューマン・スコアという形でやり始めました。学歴が高い、いい会社に就職している。でも朝、駅の駐輪所に自転車をはみ出して停めたら減点されるとか。スマホのGPSや監視カメラで駐輪の状況がわかるから、それができる。

「まさに、それらを評価点に加えようというのがWeb3の世界なんですが、ただし圧倒的に違うのは、中国は中央集権で管理しようとしますよね。ところがWeb3が導く価値は分散型で、管理者がいないから、一人ひとりが全員参加で価値を築き共有していく社会なんです」

-なるほど、ようやくWeb3の姿が見えてきました。別の言葉で言うと徹底した民主主義、水平立上げの思想だし、哲学かもしれない。

「そうです、まさに哲学です。だからさっきの話、今あるNFTの投機的な姿やメタバースの在り方も、Web3の本来的な機能や可能性をまったく使いこなしてなくて、本当はもっと大きな話なんですよ」

-一番目の「組織」の話はティールと近いですね。ティール組織は会社から上司と部下の関係をなくして、個々の社員が組織の目的を理解して自律的に動く分散型の組織論です。

「ですから、使われる側と使う側になるんじゃなくて、みんなで作り上げていく。それが分散型の本質で、社員全員が経営参画する会社の姿をWeb3が実現できると思うんですね。この話をもう少しビジネス寄りにすると、最近『X to Earn』という言葉がありましてね、」

-「Earn」は「稼ぐ」ですね。

「はい。Ⅹにはいろんな行為が入りますが、例えばⅩを『歩く』とした場合、健康のために散歩をする人が沢山いて、歩数や脈拍、体脂肪など健康関連の情報が採れますけど、今はそれで終わりで、その情報自体は活用されていない。メルカリが登場する前のガラクタと一緒です。

ところがWeb3を使って仮に1万人の健康情報が集まると、そのデータを製薬メーカーが1000万円で買って、一人1000円バックされるかもしれません。単なる散歩がお金に変わるわけですよ」

-CCCの「Tポイント」と似てますね。ポイントで消費者を囲い込んでデータビジネスに使ってる。

「『Tポイント』の場合はCCCが管理者になる中央集権型だから、CCCがしたいことに全部紐づいてしまう。発想が企業ありきになるんですね。だけどWeb3には管理者がいません。散歩している集団があって、それぞれ自発的にWeb3のコミュニティを、みんながやりたいからつくるわけで。それが分散型の特徴です。Ⅹは『学ぶ』や『購買』でもいいし、経験や体験、活動を価値化する動きです」

-一言でまとめれば、Web3は分散型で民主主義的なコミュニティ形成の機能、だと。その動きをゴルフ市場にどうやって持ち込むのか、というのが次の質問です。

「はい。一言でいえば『ゴルファーの、ゴルファーによる、ゴルファーのためのコミュニティ!』をつくりたい、これに尽きますねッ」

リンカーンの名言、人民の、人民による、人民のための政治。国民主権をゴルファー主権に変えたわけですね。まさにゴルフ民主主義。

既存の囲いを外せば発想が広がる

「あのぉ、去年から徐々にゴルフ業界に接触しているんですが、コトが概念的なだけになかなか理解してもらえないんですよ。それで今日の取材を前にかなり熟考しましてね、どんな言葉で伝えよう、どうしたらわかってもらえるだろう……それでこの言葉が浮かんだんです。ゴルファー自身がゴルファー自身の考えで、コミュニティをつくってゴルフを盛り上げる。自ら運営して楽しむという考え方で、ゴルフ業界の人たちが用意したコミュニティやサービスといった業界目線ではなく、自分たちの目線を大事にしたいんです」
-業界はゴルフの活性化を、自分たちの生活を守るために叫びますが、そういった業界目線じゃなく、

「ゴルファー自身が自分たちの目線や価値観で活動する姿です。例えば従来のコミュニティのひとつにゴルフ倶楽部があって、これも中央集権型の組織です。横のつながりがないから閉鎖的だし、連携がないのは当たり前で、管理者の倶楽部にとってその必要性がないからですよ」

-ポイントカードの囲い込みと一緒ですね。人口減少社会だから企業は血相変えて囲い込む。

「という話ですよね。ゴルフ業界にも既成のコミュニティが沢山あって、コミュニティ同士が連携すれば何かが生まれるはずですが、既存の組織を維持するためにそれをやらない。各コミュニティにはいろんな情報が点在してるんだけど、総合的に活用できてないっていう状態が今ですよね。わかりますか?」

-よくわかります。で、手始めに何をやるわけですか?

「アイデアベースではいろいろあります。プロゴルファーの卵を応援するファン倶楽部を結成して、トークンの発行で活動を支援する。その選手はファンに還元するための活動をするとか、あるいはゴルフアパレルって高いじゃないですか。なので、自分たちのアパレルをつくるコミュニティを形成したり、経営難のゴルフ場を買い取って自分たちで運営するコミュニティとか……。全国にいろんなインドアゴルフが増えてますので、これを横断的につないで裾野を広げる初心者ゴルフ体験会や、人気ゴルフ漫画とのコラボとかいろんな発想ができるんです」

-うーん、いずれもありそうな企画だけど、それがWeb3ならではというのはどの部分ですか?

「いや、Web3はそういったコミュニティを作る『機能』なんです。その機能を使ってゴルフ界に挑戦しようと思ったのは、ゴルフには豊富なコンテンツがあることに加えて、コロナ禍で若者が増えたことが大きいんですね。デジタル世代の20~30代、それから40代もWeb3への理解がありますので、当面はこの層に訴求して、50~60代にまで広げていくつもりです。

先ほどWeb3の機能に『法定手続きの自動化』があると話しましたが、会員権を買うと手数料や高額な名変料を取られるじゃないですか。だから会員権を小口化できない。でも小口化して3万円から参加できるとなれば、経営形態も変わると思うんですよ」

-分散型のWeb3経営には理事長も社長もいないですよね。誰が重要事項を決めるんですか?

「それはWeb3上で投票しあえるんです。コミュニティを立ち上げれば、あとの細かい話は民主主義的に運べるので、とにかく立ち上げて自由に走らせることが先決です」

ゼロから始める共感性がカギになる

-インドア業界の話をすれば、インドアからゴルフ場への導線がない。両者の接点をWeb3で埋められればコミュニティ形成が早いと思うんですが、既存の事業者の困りごとを解決して普及する発想は?

「う~ん………」

-ダメですか?

「Web3は、どこかの困りごとを解決する発想じゃなくて、まずはこんな世界観がありますよ、その世界観で一緒にコミュニティをつくりませんか、という話なんです」

-だけどそれじゃ遅いでしょう。世界観を一個一個つくって業界にアプローチして跳ね返されるよりは、既存の困りごと解決のほうが時間を節約できるじゃないですか。

「あのぉ、ここは大事なので繰り返しますが、Web3のコミュニティはできたものに入っていくんじゃなくて、みんながそのプロセスをつくる形じゃないとダメなんです。ビジョンを共有して、そのビジョンに向かってみんなで組織をつくるところに遣り甲斐や楽しみがあって、そうじゃないとシラけちゃう。

その意味では、当社が提示する世界観でさえありません。一番大事なのはプロセスにおける共感で、共感の醸成がWeb3の一番の機能なんです。みんなでゼロからつくっていく。正直に言えば、これをやるのはもの凄く難しくって、他の業界にも、世界を見渡してもないって言われてるぐらいなんですよ」

-選手の応援コミュニティとかは入口に過ぎないわけですね。

「おっしゃるとおりですが、ただ、ゴルフ業界での手応えは徐々に感じています。先日御社の交流会に参加して、ゴルフ場や練習場の若手経営者と話しました。彼らはDXを使った経営や地域社会との連携で新しい世界を見据えています。業界自体もチェックインや支払いの自動化、ICカードで顧客動態を分析したり、個人的なデジタル機器も沢山あるじゃないですか。今のゴルフ界には新しいモノがどんどん広がっている実感があって『一緒にやりましょう』という話ができたのは、とても大きな収穫でした(笑)」

-コミュニティ運営に採算分岐点みたいなものはあるんですか。1コミュニティにつき何人で、一人いくら出してくださいとか。

「どうでしょう。コミュニティの大きさやタイプによっても違うでしょうし、そこまでは落とし込めてないですね。今、他業界で動いてるコミュニティは数百人規模が多いんですが、走ってみないとわかりません」

-そもそも採算の概念がない?

「うん、ないと思いますね」

-新しい概念を広げるのは凄く大変ですが、途中で心が折れませんか?

「これってコストは自分の時間ぐらいだから採算に追われる事業じゃないんですよ。まぁ、徐々に広がればいいという感じで、3年は粘るつもりだし、5年は儲けがなくてもいいかな、と。ただ、僕がやらなくても必ず誰かがやりますので、大好きなゴルフの業界で真っ先に自分がやるんだと。その想いが強いんです」

-どれぐらい大好きなんですか?

「どれぐらいですかねぇ……自宅に工房があって、シャフト・グリップ交換や、バランス調整も自分でやるのが好きですね。昔から自分のスイングをビデオ撮影してPCに取り込んで、コマ送りで比較したり、ずうーっと右打ちでしたけど、数年前に左打ちに変えたりとか」

-なんで?

「なんで……う~ん。なんとなくですかねぇ。右打ちは70台でまわりますが、もともと左利きで、左打ちは初心者じゃないですか。その初心者を、右打ちの上級者が教えてあげる先生が、頭の中にいるんじゃないかなって。ヘンですかねぇ?」

-ヘンですよ。

「左に変えて3年ですが、80台半ばでまわれるようになって、今年中に80を切る、5年で70台が目標だけど、なぜ右にしたかは自分でもよくわからないんですよ(笑)」

-記者には悪癖があって、理由を何かの言葉にしないと納まりがつかない。でも「わからない」って究極の答えかもしれませんね。Web3の件も同じで、閃いちゃった?

「やりたいと思ったんですよね。とにかくゴルフが大好きで、だから日本のゴルフの敷居を下げて、若い子たちにもっともっと広げて楽しんでもらいたい。その一念です」

-ゴルフ業界でダメだったら?

「他の業界でもダメでしょう。これだけのコンテンツがあってユーザーがいて、それでもゴルフ業界を動かせなかったら無理ですよ!」

-これからの時代、事業は思想がないと創れませんからね。小河原さんの思想を広げてください。

「はい、目一杯がんばりますッ」


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