兵庫県川西市にある複合型ゴルフ練習場「多田ハイグリーン」。同練習場を率いる野原興産の野原和憲社長は、LINEと連携した新たな会員制度で業績と顧客満足度を高めている。そのシステムを作り出したのが、練習場の機器やシステム分野が専門の日本シー・エー・ディー。
そこで、同社の小俣光之社長と多田ハイグリーンの野原社長に「新システムの効果と未来像」について徹底対談してもらった。
顧客情報とLINEの連携でコスト削減と効率的マーケティング
まずはお二人の出会いのきっかけを聞かせてください。
小俣 元々は2024年のゴルフフェアですかね。野原さんが当社のブースに顔を出してくれまして。
野原 そうでしたね。その時はお忙しそうだったので名刺交換だけでしたが、後日、小俣社長が当練習場に来てくださったんです。当時、リライトカードの製造が中止になってしまい、それに代わるシステムを模索して色々な会社とお会いしていました。その中で私がやりたいと思っているものを実現できるんじゃないかと紹介いただいたのが日本シー・エー・ディーさんでした。
システム会社は何社くらい当たったんですか?
野原 10社くらいお会いしましたが、ハードの領域がメインで、システムは専門ではない会社が多かったんですね。一方、日本シー・エー・ディーさんはハードだけでなく、システムに関しての技術力も長けていました。というのも私自身、前職の通信会社で情報システムを取り扱っていたので、その辺りの会話をした時に返ってくる言葉が他の会社と違って信用できるものだったんです。
小俣 当社の開発メンバーが最初に野原さんと技術的な打ち合わせした時に頭が痛くなったと言っていました(笑)。質問のレベルが高いのとテンポが速いって。

野原 そうですか(笑)。ただその質問にも完璧に即答してくれたので、すごいなっていう印象を受けましたね。他社の場合は、できる、できないがはっきりしていたんですが、日本シー・エー・ディーさんの場合は、可能な限り実現に向けて考えてくれた。そういった会話の中から信頼関係を築けたと思います。
野原さんの要望はどういったものだったんですか?
小俣 システム移行に際して野原さんがこだわったのはスマホを活用すること、特に多くの人が使っているLINEを活用することでした。新しく専用アプリを作ることもできますが、インストールや本人認証など、お客さんにとって色々と面倒臭いことが増えます。一方、LINEなら年配の方でも使えているので、スムーズに移行できますから。
野原 ICカードも検討しましたが、リライトカードの単価が1枚90円なのに対して、ICカードは1枚200円とランニングコストがかかります。LINEを活用すればそのコストがかかりませんからね。

つまりLINEの中に会員証を入れてしまうイメージですかね?
野原 はい。多田ハイグリーンを友達追加して、店頭で登録作業をするだけで、LINEのトークルームの中にQRコードのデジタル会員証を表示できます。それを使って打席チェックインや、球貸し機からボールを出すこともできます。
スマホで全て完結するのは便利ですね。
野原 一方でスマホやLINEを使っていないお客様が15%ほどいましたので、そういう方には救済策として会員情報のQRコードが入ったペットカードを用意しました。ただこれはQRコードをカメラで撮影すれば流用できてしまうというセキュリティ上の問題があります。そこでLINEの中に、時間が経つと自動で更新される「ワンタイムQR」をデジタル会員証として組み込めないかと考えたんですね。
小俣 実際にペイペイのようなバーコード決済もセキュリティのためにこれと同じことをやっていますから。

野原 当初、ほかのシステム会社に依頼したのが、このLINEとワンタイムQRをセットで使いたいという要望だったんです。ところがワンタイムQRに関しては、24時間管理が必要になるため難しい。LINEとの連携もLINEの中に入り込めないのでノーとなったんです。
一方、これがまさに日本シー・エー・ディーさんの技術力でして、API連携(異なるシステムやサービス同士を繋ぎ、情報を共有すること)に長けているんですよ。LINEで使われているプログラムを解読された上で、こちら側の情報を持っていける点がすごいんですね。
どういう仕組みなんですか?
小俣 例えばお客さんが、LINE上で会員証ボタンをタップします。すると、LINEから本人を特定するためのID(識別番号)が当社のインターネット上サーバーへ届きます。そのIDを使って当社のインターネット上サーバーが練習場のサーバーへ必要な情報を問い合わせる仕組みです。それぞれの通信はVPNという暗号化された経路で行われますし、個人情報の本体は常に練習場のサーバー内にあり、LINEに個人情報を流すことはありませんので、安心です。

野原 これは相当な技術力ですよ。つまり全く違うサービス同士のIDを紐づけるわけですから。
セキュリティ、施設のコスト削減、ゴルファーの利便性向上になることは分かりました。ほかにどんなメリットがあるんでしょうか?
野原 もう一つは、マーケティングツールとして使えるという点です。従来の広告宣伝は、ホームページやDM、折込チラシをやっていましたが、DMは反響が3%あれば良い方です。折込チラシも割引クーポンをつけていましたが、利用するのは既存のお客様で、潜在需要の掘り起こしには繋がらないんです。
一方、顧客IDが連携したLINEなら、そのデータに基づいて、特定の方に訴求することもできるわけです。私が理想としているワン・トゥ・ワン・マーケティングです。
小俣 元々LINEだけでも性別や年齢など、簡単な絞り込み配信はできるんですけど、それでは練習場がやりたいフィルタリングのレベルには届かない。今回、野原さんと一緒にこだわったのは、あくまでも練習場に溜まっているデータを元に、例えばもうすぐ有効期限が切れちゃうお客様だけとか、本当に細かいデータで絞り込んでLINE配信するということだったんです。
具体的にはどんな限定情報を配信したんですか?
野原 若年層に対してのアプローチと再来店を促すために、30歳以下のお客様に対して特別なスクールが受けられるというものや、平日のカゴ単価を通常700円から450円、休日は通常850円を550円に特別割引するというクーポンを配信したところ反響がありました。

小俣 限定配信なので、私のLINE上には出ていません。
野原 こういった限定のクーポンは全体に配信するとハレーションも起きやすいので、クローズドにできるのはメリットなんですよ。
対象外の人は「何で若者だけなんだ」と思いますよね。
野原 今、約1万人のLINE登録者がいますが、例えば「直近6か月間で来場したお客様」というフィルタリングをかけて配信できたりもするんです。先日も女性のお客様800人に対して、来場特典としてドリンクか化粧品をプレゼントするクーポンを配信したのですが、683人が開封、開封後のクリック数が271、それに対しての来店数が74と、1割近くの反響がありました。
DMの反響数に比べて明らかに費用対効果が高いですね。
野原 はい。実際に折込チラシをやめました。今までは1回150万円×年3回で450万円かけていましたが、LINEなら月5000円で5000通まで配信できるので。
スマホやLINEを使っていない15%には、先程言ったペットカード+QRコードで対応していますが、そのコストは月に1万6000円程度。85%のLINEデジタル会員と合わせても、月2万1000円です。リライトカードの時は月に4万5000円かかっていたので、約半分のコストになりました。もしICカードに変えていた場合、想定コストは月に28万円(初月200円×1400枚)でしたのでかなりの違いです。あとは日本シー・エー・ディーさんにお支払いしている保守料のみしかかかっていません。
かなりの違いですね!
野原 実はLINEの顧客情報をAPI連携することを生業としている会社もあって、そこに依頼すると費用も去ることながら、データを別のシステムに入れるなど面倒なことになる。それを全部、日本シー・エー・ディーさんがやってくれるのは非常にありがたいです。

でもリライトカードからの移行は大変だったんじゃないですか?
野原 それはあらかじめ、リライトカードで使っていた旧サーバーの顧客情報を、新サーバーに移行し、セルフチェックイン機にお客様がリライトカードを入れた瞬間に、新サーバーに移行された顧客情報に紐づくようにしてくれたのでスムーズにシステム移行できました。これも日本シー・エー・ディーさんだからできた技術です。
小俣 リライトカードを入れると、QRコードが印字されたレシートが発行されるので、それをLINEで読み込むだけでデジタル会員に移行できます。
野原 それとこれは日本シー・エー・ディーさんのセルフチェックイン機を入れたことで解決できた事例ですが、当施設は複合施設なので、メインの第1・2駐車場が満車になることが多いんですね。もう一つの第3駐車場は1階打席に直結しているにも関わらず、練習場のフロントから離れているので、面倒臭いということで帰ってしまう方が多かった。打開策として内線を設置し、フロントに電話いただき、スタッフが手作業で打席を取るというオペレーションをしていました。そこで、1階打席入り口にセルフチェックイン機を入れたところ、機会損失を防いで来場者を増やすだけでなく、スタッフの負担も削減できましたね。
実際の利用率の変化は?
野原 セルフチェックイン機を入れたことで、1階の30〜51番打席の回転率が約200%になりました。お客様も楽になったと喜んでくれています。この辺りは日本シー・エー・ディーさんのシステムだけでなくハード面の強みがもたらした効果だと思います。
「ランク制度」で来場者増!
それと「ランク制度」にもこだわったと聞きました。
小俣 これは野原さんがデザイン含めかなりこだわったものだったんですが、要は来場回数やチャージ額の履歴に応じて7段階のランクに分けて、ボール単価を変えるという制度で、お客さんはLINEの会員画面で現在のランクと、ランクアップまでの条件を手元でいつでも見られるというものです。ただ野原さんの要望をシステム化するのが難しすぎて、当社のメンバーも頭を抱えながら何とか実現しました(笑)。

野原 でも結果的に要望以上のものを出してくれたので感謝しています。練習場は季節で来場人数が変化するので、当初は4半期ごとに更新してランクを変えたいと要望したところ、小俣さんが「どうせなら常に直近の3か月で履歴を見ていきましょう」と提案してくれました。
小俣 そうすることで、今のランクを保つには常に沢山練習しなければいけないので、常連化することもできますからね。
野原 これまで常連への特典があまりなかったので、この制度でほぼ毎日来てくれる方の満足度が高まりました。同時に打ち放題を利用するビジターの方も、月に5回利用する金額とゴールドランクの条件が変わりませんので、会員化に繋がるケースも増えています。いずれにしてもシステム移行でネガティブな声はほぼありませんでしたし、お客様同士で「わし今ゴールドランクになったぞ」みたいな会話をしているのも聞こえてきて、喜んでもらえていると実感しています。
小俣 私もシステムリニューアル後に打席でお客さんの様子を見ていたんですけど、常連さん同士で「まだLINEの会員証を使ってないの? 俺が教えてやるよ」みたいな会話をしているを聞きましたよ。
野原 そうですか! この制度を導入後、チャージ金額は前年同月比で常時110%以上を続けられているので、売り上げ面でも効果を実感しています。
練習場のスタンダートシステムに
このシステムはほかの練習場にも導入されているのでしょうか?
小俣 ICカードを使っている練習場での併用が進んでいて、梅里カントリークラブさんや、大島ゴルフセンターさんでは既に導入済みです。山ノ街ゴルフガーデンさんも導入予定で、ほかにも検討中の練習場も多いです。フルヤゴルフガーデンさんやエージーゴルフクラブさんはリニューアルと同時にQRコードに移行しました。
野原 公式LINEをやっている練習場こそ、一括でこのシステムに移行しやすそうですよね。
今後このシステムがどう進化していくのか、展望を聞かせてください。
野原 今、小俣さんに相談しているのは、4月を目途にLINE上でチャージができないかということです。そもそも現金でチャージできる機械を打席に置くというのはセキュリティ的にも問題があります。
小俣 お客さんも練習中に残額がなくなってもスマホからチャージできれば、わざわざフロントまで戻る手間が省けますからね。実はキャッシュレス化を導入することで、1回のチャージ額が上がるということがデータからも分かっているんですよ。現金だと物理的に財布からなくなっちゃうので、心理的にストップがかかるんでしょうね。
野原 この挑戦が実現すればお客様が少ない時間帯は無人営業にすることもでき、省力化、人件費削減、人手不足解消に繋げられます。一方で、ボリュームの時間帯はしっかりと人が介在して丁寧な接客をすることでメリハリをつけられます。

今後もこのシステムがさらに進化していきそうで楽しみです。では最後にまとめをお願いします。
野原 今回システムを変えたことで、お客様へのサービスを良い形に変えることができ、日本シー・エー・ディーさんとのご縁には感謝しています。何かあった場合でも、システムを熟知している方が一次対応してくださいますし、Windowsのサポートセンターでも答えられないことまでしっかりと解決してくれます。ほかではこういう対応はありませんから本当に助かっています。
小俣 ありがとうございます。昨年の4月までは、このシステムは形がありませんでした。野原さんが当社を信じてくれたことに感謝ですし、アイデアマンの野原さんとご一緒できて幸運だったと思いますね。実際に今回のシステムが当社と付き合いのあるほかの練習場さんのお役にも立っていますから。
野原 私としては、日本シー・エー・ディーさんと作ったこのシステムを当社だけのものにしたいというのは全くなくて、むしろ練習場のデファクトスタンダードにしたいという想いが強くあります。例えば今回のリライトカードの製造中止のように、悩んでいる練習場さんがありましたら、是非この形でやっていきましょうよと、どんどんアプローチしていきたいと思っています。
小俣 システムは使えば使うほど育っていくものですので、巡り巡って野原さんやほかの練習場さんのお役に立てるような、そんな好循環にできればと思います。
野原 練習場のシステムと言えば日本シー・エー・ディーさんという形になれば良いと思いますね。
小俣 これからもよろしくお願いします。
