アーティザンと言えば、世界ナンバー1プレーヤーを始め、米PGAツアーのトッププロのアイアンやウエッジを研磨してきた研磨師マイク・テーラーのブランド。日本では2019年にウエッジが発売され、現在はアイアンもクラブにこだわるゴルファーに好評だ。特にウエッジは発売から3年半が経過しているにも関わらず、その勢いは止まらない。そこには２つの異なる売れ方があり、興味深いと共に、販売店には参考になるケースとしてリポートする。
プレミアムグラインドは 客満足と店を 熟成させる
4年ほど前、アーティザンの日本上陸を心待ちにしていた男がいる。東京、神奈川に7店舗を構えるゴルフエフォートの荒井義明マイスターだ。2019年7月のウエッジ取扱い開始以来、すでに7店舗でスタンダードモデルを累計1600本以上販売している。一方でマイク・テーラーがゴルファーの好みに合わせて研磨するプレミアムグラインドモデルは、 100本以上の販売実績を誇るのだ。
「特にプレミアムグラインドは、日本の窓口である代理店が各店顧客の要望を具現化してマイクに伝えてくれる。それでゴルファーが思った通りのウエッジを手にできる。その点は大きいですね」
マイクが自ら手をかけたウエッジ。ゴルファーにすれば、手にできる満足感は価格以上。クラブに対して細かい、また競技者はウエッジ選びにシビア。それを満足させるのがマイク・テーラーの技術だという。
「実はマイクのプレミアムグラインドは、店舗の格を挙げてくれる効果もあります。その意味で、プレミアムグラインドは上質なゴルファーを呼び、店を成熟させてくれます」―。
そして荒井氏は次のように語気を強める。
「マイクの経歴は、世界トップのクラブを研磨してきただけではなく、そのバックアップクラブ（スペアとなるクラブ）を作ってきた腕だと思うんです。だから、その腕で、同じものを同じように作り、プレミアムグラインドという形で一般ゴルファーに提供しています。そこが一番すごいところなんです」
プレミアムグラインドは2本セットで18万円超。性能、品質はもちろん、店を創り、ゴルファーを満足させる。だから、発売後3年半を経てもアーティザンウエッジが売れるのだ。
荒井 義明マイスター
ゴルフエフォート白金台店
東京都港区白金台4-19-21 IGAXビル1F
TEL. 03-5791-2180
老舗専門店が売りまくる 仕上げとロフト違いでリピーターが続々
一方、関西で地域に根差して商売するのが第一ゴルフ。業界でもいち早くフィッティング販売に注力した地域一番店だ。そのアーティザンに惚れたのが、入江純一社長。取扱いに至る経緯を説明してくれた。
「実はクラブに目利きのある常連さんから勧められましてね。通常は『プロが使用しています』という謳い文句に飛びつかないのですが、テストラウンドで試したんです。そしたら、当店のスタッフを含め、チップインが2回、ピンにあたったのが2回、同じ日に起こりましてね。これは売れると思ったんです」
その後、入江社長がマイク・テーラーについて調べてみると、
「過去には、ベン・ホーガンの仕事をしたっていうじゃないですか。僕は、いまのアイアンの基礎は、そのベン・ホーガンの時代にできていると思っているんですよ。だから、マイクは良いクラブを創る職人だと思ったんです」
当初はノンメッキのウエッジから販売し、今では３種類の仕上げと、同店が長年培ったフィッティング技術で、シャフトを選びゴルファーに合わせて販売している。
「シャフトによっては2本で10万円以上になりますから、経営的には大助かり。それ以上に、６つのソール、ロフトはソールによって46度から60度。分かりやすく売りやすいですよね」
そして仕上げ違いで購入するゴルファーが多いという。
「アーティザンの購入者は、仕上げ違い、ロフト違いで改めて購入する方が多い。それはロフトのバリエーションやソールの豊富さ、そして見た目も選べるからです。その意味でもリピートがあるウエッジブランドは、アーティザンだけですね」
最近ではウエッジの高品質、高性能がゴルファーに伝わり、アイアン購入者が相次いでいるという。
入江 純一社長
第一ゴルフ堺店
大阪府堺市西区神野町3丁5-32
TEL. 072-273-5620
選べる重要性がゴルファーの満足度とゴルフショップのビジネスを支えている
2店に共通するのは、プレミアムグラインドにしても、スタンダードモデルにしても、マイク・テーラーの経歴はもちろん、ゴルファーが選べる、好みに仕上げてくれるシステムがある。それが何よりもゴルファーの満足度を向上させ、売り手は経営的視点から注力する。その意味で、まだまだアーティザンブランドの躍進は止まりそうにない。
