三菱ケミカルは3月4日、『TENSEIProOrange1K』(ワンケー)シリーズ(5万5000円)を発売した。
2019年に日本上陸を果たした『TENSEI』ブランドは2017~2018シーズンの海外メジャー競技で最も多くのプレーヤーが手にしたことで、日本のツアープレーヤーの使用率も高く、まさに全世界のツアーを席巻するシャフトに成長した。
原料からの一貫生産を可能とする同社の強みを生かし、多様な材料を用いて、常にプレーヤーが求める性能を実現することから、「数多の材料が高性能シャフトとして転生する」、また「天性」、「点睛」にも通じるメッセージがブランド名の由来となっている。以下でその特徴を解説しよう。
新素材で先端剛性がアップした「曲がらない」シャフト
今作の『ProOrange1K』シリーズは、『CKProOrange』シリーズをベースに、弾性率と強度の両立に成功した高性能素材「MR70」を先端部に配置。剛性をさらに高めることによってインパクトの再現性を高めると同時に、強烈な弾きで強く鋭い球を打ち出せる構造になっている。
またトゥダウンによる打点の縦のブレを低減。加えてトルクを抑えることで左右の打ち出しのズレも抑制されサイドスピンを低減した「曲がらない」シャフトに進化している。近年の大型高MOIヘッドのポテンシャルを最大限引き出せるシャフトだ。
カウンターバランスによる「振りやすさ」で淀みのないスイングに
さらに高比重のタングステンパウダー入り炭素繊維プリプレグを手元側に配置しテーパーバット設計に。カウンターバランスにより切り返しでタメを作りつつインパクトからフォローにかけて軽快に振り抜けるので、鋭くヘッドが走り強く前に伸びる球が出やすい。「振りやすさ」を重視した設計になっている。
独自技術「XlinkTech」で炭素繊維の性能を最大化
また手元側には三菱ケミカル独自の技術「XlinkTech」(クロスリンクテック)を採用。
カーボンシャフトの構造は、簡単に言うと炭素繊維を樹脂でシート状にしたもの(=プリプレグ)を重ねているので、両者のコンビネーションが重要になってくる。
そこで同社はマトリクス樹脂の組成を最適化して、強固な「架橋構造」(クロスリンク)を構築することで、同社従来品比で、強度14%、弾性率15%、破断伸度8%向上させることに成功した。この辺りは炭素と樹脂を知り尽くした同社ならではのテクノロジーと言えるだろう。
「1Kクロス」による精密な設計でしなやかさを実現
さらに『TENSEIProWhite1K』シリーズ同様に今作も「1Kクロス」を採用。
一般的なカーボンシャフトは炭素繊維の一束あたりのフィラメント数は3000本(3K)だが、「1Kクロス」は一束あたり1000本(1K)となっている。1Kを採用したことにより綿密な織目となり、高賦形性を維持。成形の加工自由度が高く、精密な設計が可能となった。
また、織目が細かいことでカーボンの蛇行も少なく、カーボン繊維間の樹脂の量も抑えることができるため、重量も抑えられるメリットもあり、エネルギーロスも減らした効率の良いインパクトを実現できる。
また『TENSEICKProOrange』に使用した「CK」(カーボンケブラー)は厚みを感じるという声もあったが、『1Kクロス』によってしなやかさも生まれ、その点を解消したフィーリングになっている。
こだわりは性能だけでなくデザインにも及んでいる。ブランドロゴはホログラム調になっており所有感を満たすシャフトになっている。
豊富なスペックでメジャーチャンプと同じシャフトを
またスペックは前作にはなかった50TX、80S、80Xとラインナップを拡大し全14スペックに。幅広いゴルファーにメジャーチャンプと同じ「世界の飛び」を体験させる構えだ。
今作はカウンターバランス設計により他社の同じ重量帯に比べて重さを感じにくい。また元調子は難しいという先入観があるが同社の素材と技術で振り抜きやすいシャフトに仕上がっている。既成概念を外して一度試打してみることでそれぞれのゴルファーに最適な1本が見つかりそうだ。