2026クラブ・ボール

地クラブの神髄 KEYTONE

KYETONE

2026/04/01

亡き者にしない―。
それが謎のデザイナーでクラブ設計家であるMILO KEYTONEのひとつの理想なのだろう。
欧州北部のゴルフ一家の長男に生まれ、クラブ収集家としての想いが募り、クラブ設計家の道へ。
世界中の製造工場を巡り、辿り着いたのは日本のSASAKI。
そのもの創りに惚れ込み、2025年6月に突如現れた『KEYTONE』。
その神髄に迫る。

神髄一 謎の設計技師ミロ・キートン

2025年6月、突如現れたクラブメーカー「KEYTONE」。まず、問うたのがロフト角36度から2度ピッチで60度まで、ネック形状、そしてバウンス角の違いを含めれば、1モデルで世界最多といわれる36種類のウエッジ『SCREW TYPE R』。

設計したのは欧州北部のゴルフ一家に生まれたMILO KEYTONE(ミロ・キートン)。年齢は不明。血液型は不明だが本人曰くO型。分かっているのはクラシック音楽を好み、ワインを嗜むこと。鍛冶屋の長男で、耳で音を聞き分ける能力を持つミステリアスな人物。しかし、その姿を見た者はおらず、実際は複数のゴルフ愛好家が創り上げた想像上の人物という噂もある。

KEYTONEの出山泰弘社長は、

「姿を見たことがない」

と前置きして説明する。

「MILO KEYTONEはゴルフ一家に生まれたこともあり、幼いころからゴルフを楽しんでいたようです。家業が鍛冶屋ということもあり、もの創りが身近にある日常があった。鉄が潰される情景が目に焼き付いていると聞いています。鍛冶を見て真似、ヘッドらしきものを造ったこともあるようです。その幼き頃の遊び、そして自らゴルフプレーヤーとして、さらにはクラブ収集家であったこともクラブ設計を志す理由のひとつだと」

ゴルフ好きでプレーにもこだわり、クラブにも執着する。加えて、固定概念に捉われず、世に存在するものへの敬愛の念もありながら、世に存在しないものを欲し、そして自ら創る衝動を抑えきれない性分。強烈な独創性を備えながら、一転、クラブに関しては古典正統派。

「アイアンは飛ばすものでなく、狙うもの。ウエッジは寄せるもの。そのようにクラブに要する本質が明確。何故なら、ゴルフのひとつの終着点がスコアだからだそうです」

それに加え、MILO KEYTONEは亡き者を現代の技術をもって蘇らせたいという想いも同時に持っている。

「無いものを創る。その昔、在ったものを、愛着のあったものを何度でも再現する。それをゴルフクラブで成し遂げたい。それがMILO KEYTONEという設計技師だといわれています」

MILO KEYTONEは生粋のゴルファーである。慣れ親しんだ愛おしいクラブが歳月を経て哀愁を帯び、直すこともできずに、いずれゴルファーの手を離れざるを得ない刹那がやってくる。

「ゴルファーには、ゴルフとの別れは無いが、クラブとの別れは在る」―。

しかし、ゴルファーには一生涯使いたいと切なる想いを抱くクラブがある。そのクラブを手にするだけで心も身体も落ち着く。不安というネガティブ要素が消えて、初めてゴルフというゲームに対峙することができる。そんなゴルファーの切なる想いにすら寄り添うのがMILO KEYTONEという設計技師だといえる。

神髄二 多品種少量生産いずれ全景へ

謎多き設計技師MILO KEYTONEが立ち上げたクラブメーカー「KEYTONE」。数多の銘柄が犇めくマーケットにおいて、独自の立ち位置を創造する。

「これまでの業界の悪しき習慣である大量生産大量販売から離れて、多品種少量生産に専念します」と出山社長が語気を強める。「それは海外の大手クラブメーカーでも真似できないはず」

大量生産大量販売の時代は、既に終わりを迎えている。趣味嗜好が多様化し、各々に合わせる最適化が最先端。だからこそ、使い手の痒いところに手の届くブランドでもありたい。

「近年、アイアンのストロングロフト化が進み、ツアープロでもUTの次は7番アイアンというセッティングもある。そうなると、44度のウエッジより、立っているロフトのウエッジの要望も想像される。だから『KEYTONE』は36度からのウエッジ」

奥底にはMILO KEYTONEのクラブに関する考え方がある。それは万人に合うクラブはあり得ないという思考だ。それゆえ、使い手に寄り添うための36種類にもわたる『SCREW TYPE R』が生まれている。

他方、MILO KEYTONEの志向はウエッジだけではない。ゴルファーに寄り添うという意味では、ウエッジの上に位置するアイアンはもちろん、パターからドライバーまで志向する。開発力の強さ、柔軟性を持って開発に臨む。それが多品種少量生産の「KEYTONE」だといえる。

そして何よりも他と一線を画すのは、同じものを造り続ける、同じものをゴルファーに届けるブランドであるということだろう。

「近年、商品寿命が短く、次々と新しい商品が世に問われ、その都度、廃盤となる。新しい商材が世に問われることの良し悪しはさておき、同じものが在り続ける安心感はない」

「同じもの」―。

それは単なる銘柄の話ではない。寸法サイズ、機能に至るまで寸分たがわず造り続けることは、工業製品では至難の業。ゴルフクラブは嗜好品でありながら、工業製品でもある。大量生産であれば、必ず公差は逃れられず、ゆえに、「同じもの」の存在は厳密にいえば、無いのである。

それではMILO KEYTONEの想いを形作ることができない。ゆえに、MILO KEYTONEは世界中の製造工場を巡った。さらに将来は、ひとつのクラブではなく、ゴルフクラブという道具の「全景」を見渡す存在を視野に入れなければならない。そしてMILO KEYTONEは、この「KEYTONE」ブランドのクラブへの想い、そして創りたいものを可能にするSASAKIに辿り着いた。

神髄三 打感、打音、美観高精度の技術力

もうひとつMILO KEYTONEがクラブに求めるものがある。打感、打音、美観がそれだ。その三位一体が機能を司るという。

MILO KEYTONEが求める打感とは、

「鍛造は鉄を何度で熱するのか、そして何度叩くのか。それによって打感は変わる。MILO KEYTONEの求める打感は、打球時には軟らかく感じながら、ずっと深いところに芯がある軟らかさ」

それを可能にしたのがSASAKIだ。同社は、「設計」「鍛造」「MILLED」「研磨」「塗装」「組立」のすべての部門の工程を、一貫して社内で行う日本国内では唯一の製造工場。その鍛造は1回鍛造。何故なら、素材本来の成分、性質を十二分に発揮させることができるとSASAKIは考えるからだ。ゆえにMILO KEYTONEが求める奥底に芯がありながら軟らかく感じる打感を実現している。

そして美観だ。多くの鍛造ヘッドは、鍛造の回数もそれぞれだが、人の手による研磨で造形されていると言っても過言ではない。だから厳密にいえば、MILO KEYTONEが求める同じものは造り続けられない。日差しの強い朝の研磨は、朝の顔になる。暗い夜の研磨は、夜の顔になる。

しかし、SASAKIでは研磨を人の手に任せることなく、業界でも類を見ない5軸加工機を導入。この5軸加工機は、ワールドカップのトロフィーを造る際に使われる加工機で、その活用がMILO KEYTONEの求める美観に大きな影響を及ぼす。

「ヘッドは曲面と平面、曲線と直線の繋がりによって形が創られる。それを考慮した時、3軸加工機では加工時に一旦ヘッドの設置を天地逆にセットしなければならない。その作業は人の手によるものであり、ズレは免れない。結果、曲面、平面、曲線、直線のつながりは僅かにズレる」

それが5軸加工機であれば、天地を変えることなく、ネックの懐、ネックのライン、フェース面の面取りが一気に加工できる。しかもSASAKIでは、各ロットの加工機へのセッティングも自動。人の手を介さないことにより、同じ製品を高精度でズレを排除しながら作り続けることができる。

「ウエッジでいえば、フェース面とネック端面だけが平面。そことの繋がりに違和感を覚えないことこそが、ヘッドの美しさに繋がる」

そして5軸加工機ゆえにフェースミーリング、そして遊び心満載のバックフェースのダイヤモンドクロスカットを具現化している。とはいえ、機械加工。使用上、機械自体がズレを起こす。その点も、

「SASAKIでは頻繁に機械自体の較正(キャリブレーション)を行う。それが精度を一定化する」

たとえ愛するクラブと別れることがあっても、SASAKIで創る「KEYTONE」には、その記憶ごと引き戻すだけの技術がある。

神髄四 狙い撃つための36度のウエッジ

ゴルフクラブの歴史を見れば、アイアンは2番アイアンと、3番から9番、PWの8本セットの時代が長く続いた。2〜4番で1つの金型、5〜7番で1つの金型、8〜PWまで1つの金型で鍛造ヘッドは成型されていた。そのためか、8番アイアンからはウエッジ形状に近く、トゥ側からネックにかけてのトップラインは丸みを帯びている。

それに加え、アイアンが苦手だけどウエッジを好むゴルファーは多い。

「ならば、その形状で8番アイアンのロフト角のヘッドを造れば良い。フェース開閉に対するイメージが湧くことで、30〜50ヤードのややこしいバンカーショットも違和感なくショットに臨める」

だからMILO KEYTONEは36度のウエッジを創った。理由は他にある。

「逆にアイアンが好きでもロングアイアンは苦手なゴルファーも多い。先々、同じ形状の4番アイアン相当のウエッジがあっても良いかもしれない」

そして最大の理由は、MILO KEYTONE自身が考えるゴルフの在り様だろう。

「ゴルフは飛べばいいというものではなく、最終的にはスコア。つまり、グリーンを狙う、ピンに寄せる。そこにはアイアンであってもスピン量が多ければ、グリーンで止まる。狙い撃つことができる」

スピンが入れば入るほど、飛ばない。ただ、MILO KEYTONEの考えるゴルフは、アイアン、ウエッジは飛ばす道具ではない。ウエッジ形状ゆえにハイスピンならば、それを否定する理由は何処にも見当たらないのだ。

それがMILO KEYTONEの発想力なのである。いずれ世に出てくるパターやドライバーにも常識に捉われない発想でありながら、理に叶うクラブに期待ができる。

そのような意味でMILO KEYTONE、そして「KEYTONE」というブランドは何なのか? その答えは、MILO KEYTONEという姿を知る者もいない、架空を噂されるクラブ設計家が、これまでの市場を席巻してきた大手クラブメーカーには到底できないことを、SASAKIという日本で高い技術力を持った製造工場と出逢うことで、MILO KEYTONEが望む、そしてゴルファーに寄り添うクラブ創りを実現するメーカーだといえる。

寄り添うとは何なのか?

「やはり、たとえ愛するクラブと別れることがあっても、SASAKIで創る『KEYTONE』なら、また同じ感触に出逢うことができる。そういうブランドだと思います」

それが使い手への想いだ。新しい技術を次々開発する大手クラブメーカーは、業界全体の技術力の底上げに一役買っているかもしれない。しかし、新商品が毎年発売されれば、愛着のあるクラブを使い続けることは難しい。真の意味でゴルファーの想いに応えるブランド「KEYTONE」の船出はまだ始まったばかりだ。


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