伊藤超短波から発売中の『RUCOE GOLF(ルコエゴルフ)』(4万2900円)が、プロやアマチュアゴルファーの間に徐々に浸透し始めている。
同社は超音波治療器や低周波治療器で業界トップシェアを持つ医療機器メーカーで、創業106年と歴史も長い。『ルコエゴルフ』はそんな同社のノウハウを最大限注入し、ゴルフ専用に作られたコンディショニング機器だ。
特徴は、特殊な電気を筋肉に流すことで体幹に働きかけ、効率の良いゴルフのパフォーマンスを狙ったもの。使用方法は至ってシンプルで、本体に繋いだ専用のジェル状パッドを体に貼りスイッチを入れるだけ。コンパクトな本体ながら、ゴルファーの悩み別に3つのモードを搭載するなど、本格的な作りになっている。
とは言えその効果がどのようにスイングに影響するのか気になるところ。そこで、下半身と足裏の仕組みから独自のコーチングを行う足のスペシャリスト・神谷幸宏氏が『ルコエゴルフ』を検証。最新の足裏計測器『スイングカタリスト・デュアル』を使って、使用前後の数値にどのような変化があったかを検証した。
『スイングカタリスト・デュアル』とは?
PGAのトッププロが愛用する最新の足裏計測器。スイング中の左右の「足圧」とその動きに加え、足裏の「トルク(回転の力)」「ホリゾンタル(横方向の力)」「バーティカル(縦方向の力)」を、それぞれ「N(ニュートン)」という数値で示すことができる。ニュートンが大きいほど、足裏が効率良くエネルギーを出せていることになり、言い換えると、ボールに力が伝わっているということになる。
プロ・上級者の神谷氏とアベレージゴルファーのGEW記者の2名がテスターとなり、アイアン・ドライバーを2球ずつ打ち、『ルコエゴルフ』使用前後の数値の変化を検証した。今回は手首に『ルコエゴルフ』のパッドを貼り、3分間だけ通電する「スイッチ」モードを使用。使用中に同社が推奨する簡単なストレッチを実施した。
なお足圧の見方だが左側は左足、右側は右足、上がつま先側、下が踵側を表している。
GEW記者のケース
アイアン編
神谷 まずは左右の足圧の中心にあるグレーの丸を見てください。これは「センター・オブ・プレッシャー」(中心圧)と言って、両足の圧の中心がどのように動いたのかを線で表しています。足裏の体重移動を表しているとも言えます。
見比べてみると『ルコエゴルフ』使用前(図1‐1)の方が中心圧の動きが蛇行しており、使用後(図1‐2)の方が綺麗な動きになっていることが分かります。つまりこれは使用後の方が無理な動きがなく、スムーズな体重移動ができたことを意味しています。
次にダウンスイング時の「ホリゾンタル」の数値を見ると、使用前(図1‐1)が105Nに対して、使用後が109N(図1‐2)と微増していることが分かります。記者の大矢さんはバックスイングでは右足が、ダウンスイングでは左足がめくれてしまう傾向があり、本人もスウェーが悩みのようですが、「ホリゾンタル」が微増したということは『ルコエゴルフ』によってスウェーが改善されたことを物語っています。
次に「バーティカル」を見ると、使用前が897N(図2‐1)だったのに対し、使用後が959N(図2‐2)と大幅に数値が出ています。「バーティカル」が上がったということはしっかりと地面に力が伝わっているということになります。
そして最後は「トルク」ですが、こちらは使用前が51N(図3‐1)だったのに対し、使用後は36N(図3‐2)と数値が下がりました。おそらく「ホリゾンタル」と「バーティカル」が上がり、体の使い方が急に変化したため「トルク」に影響が出たのだと思います。ただ、前述の中心圧が良い動きをしていますので、変化した状態に体が慣れてくれば「トルク」も上がってくると考えられます。
もう一つ注目してほしいのは、切り返しからダウンの時の左足の状態です。使用前は左足を踏み替える動作をしており、その影響でフォローでは完全に左足のつま先が前を向いてしまっていた(図3‐3)のに対し、使用後は踏みかえ動作も少なく、フォローで左足のつま先がアドレス時の状態を保てている(図3‐4)のが分かります。つまり使用後の方が左足でしっかり力を受け止め、ボールに出力できる状態を作れたということになります。
これはスイングデータにも出ており、使用前のクラブパスが平均2.5度アウト‐イン(図4‐1)だったのに対し、使用後は1.4度アウト‐イン(図4‐2)と、アウトサイドインの度合いが改善されていることが分かります。わずか3分間でこれだけの変化が出ているのは正直驚きです。
ドライバー編
神谷 続いてドライバーを見ていきたいと思いますが、使用前(図5‐1)に比べ、使用後(図5‐2)の方が中心圧の動きの縦幅が狭くなっていることが見て取れます。つまりこれは前への突っ込みが少なくなっていることを意味しており、真っ直ぐな体幹で立てていることになります。
まず「トルク」を見ていくと、使用前が59N(図5‐1)だったのに対し、使用後は64N(図5‐2)とアイアン同様、若干数値が下がっています。
ただ「ホリゾンタル」を見ると、使用前の100N(図6‐1)に対し、使用後は127N(図6‐2)と大幅に数値が上がっています。それと「ホリゾンタル」をピンク色で表したグラフを見ると、使用後の方が最高点に向かって山が鋭角になっていることが分かります(図6‐2)。これは瞬発的に力を出せていることを意味しています。また、黒いゾーンはPGAツアープロの平均値を示しているのですが、使用後は山の頂点がこのゾーンに到達しています。それだけ効率良く横方向の力を出せたことになります。
続いて「バーティカル」ですが、こちらも使用前の1086N(図7‐1)に対して、使用後は1129N(図7‐2)と増大しており、同じくブルーの山の頂点も黒いゾーンに到達しています。以上のことからアイアン・ドライバー共に「ホリゾンタル」と「バーティカル」が増大したということが分かります。
さらにアイアンの時同様、使用前(図7‐3)に比べ使用後の方が左足の踏み替え動作が減り、つま先のめくれが改善されています(図7‐4)。ダウンスイングで左足つま先が飛球線方向に向いてしまうと、それだけアウトサイドからクラブが下りてきてしまうのでボールが曲がりやすくなります。逆につま先の開きを我慢できればインサイドからクラブが下りやすくなり、理想的なクラブ軌道になると言えます。
その証拠に使用前のクラブパスが平均4.2度アウト‐イン(図8‐1)だったのに対し、使用後は3.8度アウト‐イン(図8‐2)になっています。そして、特筆すべきはヘッドスピードです。使用前が平均38.8m/s(図8‐1)だったのに対し、使用後は41.1m/s(図8‐2)と、約2m/s速くなっています。短時間でこれだけの変化はなかなか見られないことだと思います。
神谷幸宏氏のケース
アイアン編
神谷 次に私の使用前後を検証していきたいと思います。使用後は私の中でも体を使えた感覚を実感できていたのですが、数値にも現れました。
まず「ホリゾンタル」の数値を見ると、使用前の187N(図9‐1)が使用後は235N(図9‐2)に増大していました。私は普段から「スイングカタリスト」でデータを取っていますが、235Nという数値はなかなか出せません。ピンク色で示した「ホリゾンタル」の最高点もPGAプロの平均(黒いライン)に到達しています。
次に「バーティカル」ですが、こちらも使用前の1081N(図10‐1)に対し、使用後は1243N(図10‐2)と大幅に増大していました。しかも使用後のみPGAプロの平均値に届いています(図10‐2)。
そして最後の「トルク」ですが、使用前の107N(図11‐1)に対し、使用後は124N(図11‐2)と、この数値も上がりました。以上のことから私の場合は、全体的に3つの力が底上げされたことになります。
最後にクラブと弾道データを見ていくと、使用前後とも7番アイアンの平均飛距離はキャリーで171ヤードと変わらなかったのですが、使用前のショットは平均で左に23.1m曲がった(図12‐1)のに対し、使用後は左に6.3mと、ほとんど曲がりませんでした(図12‐2)。左に巻くと通常は飛距離が出るのですが、同じ飛距離でさらに真っ直ぐ飛ぶというのは、ピンをしっかり狙うアイアンショットにおいては重要なこと。この変化は正直すごいと思います。
ドライバー編
神谷 続いてドライバーを見ていきたいと思います。まずは「トルク」ですが、使用前の144N(図13‐1)に対し、使用後は134N(図13‐1)と微減しています。ただ中心圧の動きを見ると使用前(図13‐3)に比べ、使用後の方が平らな円になっている(図13‐4)ので、無駄な動きがカットされたということが言えると思います。
続いて「ホリゾンタル」ですが、こちらも数値は使用前の192N(図14‐1)に対して、使用後は184N(図14‐2)と下がっていますが、ピンク色の数値の山が使用後の方が鋭角になっているのが分かります。数値は増えなかったものの、短い時間で瞬間的に力を出せたことを意味しています。
そして最後は「バーティカル」ですが、これも使用前1155N(図15‐1)に対して、使用後は1097N(図15‐2)と数値は下がっています。
これらを統合するとドライバーに関しては3つの数値共に使用後は上がりませんでした。
ただ、注目すべきは弾道データの方です。使用前のドライバー飛距離が平均298ヤード(図16‐1)だったのに対し、使用後は平均304ヤード(図16‐2)と伸びていました。2球とも300ヤードを超えており、飛距離のバラツキがないのも特徴です。足裏の3つの力は「ホリゾンタル」のみの変化でしたが、実際の弾道結果が短時間で好転していたのは、非常に興味深い検証結果になったと思います。
『ルコエゴルフ』の検証結果を神谷幸宏氏が総括
神谷 以上、私とアベレージゴルファーの大矢さんの『ルコエゴルフ』使用前後をデータ検証しましたが、同製品はスイングやパフォーマンスに効果的だったということがデータ上も分かりました。今回は下半身とは関係なさそうな手首にパッドを貼って通電させましたが、実は上半身と下半身は密接に繋がっていて、上半身が使える状態になることで、それに引っ張られて下半身も使えるようになるということがあります。その意味でも今回の検証で『ルコエゴルフ』によって身体が使える状態に変化したということが明確になったと考えられます。
手首だったら日常の練習前やラウンド前に手軽に使えると思いますし、今回検証に用いた「スイッチ」モードはわずか3分で使用できる点も良いです。もし余裕がある場合は、例えば臀部やふくらはぎなど、下半身の部位に直接通電してみると、さらに変化が出るのではないかと思います。