時を超えて低反発で高反発時代の飛距離を超えろ!
飛ばし屋御用達ブランドの「エスティバン」。前作のドライバーヘッド『460D』から7年ぶりの新ドライバーは、時代を超えた飛距離性能を謳う『CHRONO』。鋳造でもなく、鍛造でもなく、3Dプリンタ製がゆえに到達したヘッド剛性。ヘッドをたわませるのではなく、ボールを極限までつぶして、且つインパクト時のエネルギーをロスなく初速に変えることが最大のポイント。その開発物語。
製法は3Dプリンタヘッド内部の剛性を上げる
『CHRONO』の開発は、3Dプリンタでの製法ありきでスタートした。エスティバンゴルフの松谷伸次代表が、3Dプリンタでの製法を選んだ理由を説明する。
「ドライバーヘッドの製法において、3Dプリンタでの製造が確立しつつあることと同時に、3Dプリンタでは鋳造や鍛造では成しえない内部構造が可能になります。一番の狙いは内部構造の剛性アップ。それによってボールをつぶして飛距離に変える。それが開発コンセプトです」
さらに、構造だけではないと松谷氏が語気を強める。
「鋳造や鍛造製法では、チタン材やヘッド構造の強度アップは限界があると考えています。ポイントは、ヘッド内部構造の剛性アップで、3Dプリンタならヘッドの剛性アップに繋がる複雑な構造が可能だったんです」
クラブメーカーの中には、ヘッドをたわませて初速を上げて飛距離に繋げるという理論を重視するメーカーもある。しかし、松谷氏は違う。
「ヘッドをたわませるというのは、スプリング効果によって飛ばすということだと思います。ただ、スプリング効果は規制があります。一方でCT値が低くても、ボールがつぶれれば、ボールは反発して高初速で飛距離に繋がる。そこがポイントでした」
内部の穴の開いた橋3Dプリンタで実現した飛距離
その構造は画像を参考にしていただきたいが、ソールに円柱型の土台をデザインし、その上を飛球線方向(バックフェース側からフェース面)に向かって穴の開いた橋「ディスタンスブリッジ構造」を設計している。
「これによってヘッド内部構造の強度がアップし、ヘッドのたわみを最小限に抑えることができたんです。3Dプリンタでしか、成型できない構造ですね」
その「ディスタンスブリッジ構造」に穴が開いているが、
「ファーストサンプルは穴が開いていませんでした。一方で打音に改善の余地があったんです。それで『ディスタンスブリッジ』に穴を開けたところ、高い金属音ですが短く収束する打音に改善され、結果として新たに余剰重量も生まれたんです」
さらに、3Dプリンタ製法によるメリットはほかにもある。
「ほとんどのドライバーヘッドの場合、鋳造でも鍛造製法でもフェース部とボディは溶接で結合されています。それが3Dプリンタでは溶接部が不要になるんです。溶接による重量を排除し、新たな余剰重量が生み出されました。重量配分
の自由度が広がると共に、スイートエリアが広くなる設計が可能となるんです」
クラブすべてにいえることだが、オフセンターヒット時のボールスピード減速への対策は、ドライバー開発で避けては通れない要点。それは如何に余剰重量を生み出して、フェースはもちろん、重心位置を最適化するかにかかっている。それが3Dプリンタ製法であれば、格段に向上するという。
時を超えた飛距離を追求最適を覚えるための時計
『CHRONO』の名前の由来は2つある。一つは時を超えた飛距離の追求だ。
「高反発規制後、当然ですが殆どのドライバーがルール適合内で製造されています。反発係数を競い合った時代とは異なり、いまは規制内で如何に飛ばすかが開発のポイントとなっています。『CHRONO』には『時』という意味もあり、時を超えて、高反発時代の飛距離を規制内の低反発ヘッドで超えるという想いを込めています」
もう一つある。それは、
「ソールには可変式ウエイトが3つ装着されています。3gが2つ、5gが1つですが、時計の文字盤をデザインしたウエイトの稼働範囲は、最適な配置を覚えやすくするために、このデザインを採用したんです。『最適なウエイト配置は何時何分』というイメージですね」
ネックの弾道調整機能やウエイトの可変機能は、ドライバーに採用されている機能として当たり前の時代になっている。しかし、調整すればするほど、迷路に迷い込むゴルファーは少なくない。だから、
「ゴルファーが最大の飛距離を追求する中で、ゴルファー自身が最適な重心位置を覚えやすくすることは非常に重要だと考えています」
多くのメーカーが同様の機能をドライバーに搭載し、WEBサイトなどで調整方法や実現できる弾道を説明しているが、最適なポジションを覚えやすくする機能は搭載されていない。エスティバンならではの機能と言って良いだろう。
将来はリーズナブルな価格へ3Dプリンタ導入視野に
ゴルフクラブの製造において、第三の製法と言われる3Dプリンタ。ヘッドの内部構造の複雑化に適しており、鋳造、鍛造では不可能な構造も可能にする。ただ、量産に適していないこと、製造原価が圧倒的に高いことがデメリットとされる。
「3Dプリンタでの製造でヘッド原価が通常より高いことも、多くのメーカーで製造方法として採用していない理由だと思います。その上で、今回の『CHRONO』はヘッド単体で20万円前後を予定しています。すでに市場に流通しているヘッドと比較して、それでも安い価格に設定できたと考えています」
この構造と価格。ゴルフクラブの価格高騰が常態化している現状でも、群を抜いて高価格だといっても過言ではない。だからこそ、
「将来は3Dプリンタを自社で保有して、製造原価を下げたい。それによって、多くのゴルファーに3Dプリンタだからこそ辿り着ける飛距離を味わってほしいと思っています」
時を超えた飛距離を追求する『CHRONO』。3Dプリンタが可能にした飛距離のその先を体験してもらいたい。