「ロイヤルグリーン水戸」(茨城県)と「ロイヤルグリーンいわき」(福島県)の2か所の練習場を運営するウィルトラストは、昨年よりインドアゴルフの運営に乗り出した。そして今春より「ハイブリッドゴルフスクール」を訴求する。同時に米国発のアプリを活用した「AIレッスン」と「コーチ育成プログラム」を展開とネタは尽きない。一体どういうことなのだろうか? 礒﨑博文社長のパッションを聞いた。
今年はロイヤルグリーン(RG)水戸のリニューアル5周年ですね。2年前にリニューアルしたRGいわきも含め業績はいかがでしょうか?
「お陰様でスクール事業を中心に好調です」
詳細は後で聞くとして、インドア経営にも参入したようですね。
「昨年8月に事業譲渡で『バロンゴルフ幕張倶楽部』(千葉県)を取得しました。すでに会員基盤があり、事業としての完成度も高かったため、本格的に取得へと動きました」
当時の同店舗の業績は?
「会員330人で営業利益を1500万円と、非常に好調でした。前オーナーはスタッフ教育を徹底されており、手放す理由も、本業の教育事業に集中すべきだという前向きな判断でした。目先の利益ではなく、志を重視するその事業ビジョンに共感し、ぜひ当社に引き継がせてほしいとお願いしたのです」
練習場×インドアの「ハイブリッドゴルフスクール」

取得したインドアを使って、今後どうしていくのかという点が気になります。
「実は8年前から温めてきた構想で、練習場とインドアを組み合わせた『ハイブリッドゴルフスクール』を展開していこうと考えています」
どういうことですか?
「RG水戸のスクールを例にすると、生徒数は450人、売上は月600万円弱と、全体売上の3割以上を占めるまでに成長しました。すでに定員に近く、予約が取りにくい状況ですが、それでも車で30分離れた水戸駅周辺をはじめ、茨城県全域、県外では宇都宮からなど、1時間以上かけて通ってくれる生徒さんも多い。それだけ当社のスクールに価値を感じていただいているのだと思います。
そこで水戸駅至近の一等地に全5打席のRGインドアスクールを開業予定で、RG水戸スクールと相互利用できるようにします。水戸駅近くの生徒さんは通いやすくなってCS向上になりますし、駅周辺のゴルファーを新規開拓できる。RG水戸の定員にも余裕ができるため、2店舗で800人規模の生徒を獲得できると見ています」
相乗効果が見込めそうですね。
「練習場とインドアをハイブリッドで考える理由は、それぞれ役割が全く違うからです。インドアは弾道が見えない分、スイング作りに集中できる。一方、練習場では実際の弾道が見えることで、ゴルフの楽しさや成長を実感できます。
そこでインドアでスイングを作り、練習場でその成果を確認するという使い分けを提案していこうと考えています。例えば初心者であれば、まずRGインドアで基礎的なスイングを身につけ、その後RG水戸で生の弾道を体感する。ハイブリッドにすることで、生徒さん自身が目的に応じて練習環境を選べるようになります」
幕張を取得した狙いもそこにある?
「はい。インドア経営のノウハウを現場で学ぶと同時に、そこで得た知見を水戸のインドア開発に活かせると思いました。今後、幕張でも近隣の屋外練習場と連携し、ロイヤルグリーンのスクールをハイブリッドで展開していきたいと考えています」
スクール生のCS&継続率向上RG版AIコーチ『Xビュー』

面白いですね。ハイブリッド型で初心者は継続率が高まりそうですが、中上級者はどうでしょう?上達すると辞めてしまうのでは?
「確かに、上級者になるほどスクールの在籍期間は短くなる傾向があります。ただ、考え方は初心者と同じだと思っています。
インドアでは弾道測定器を使って、ヘッドスピードや入射角、スピン量など細かな数値を確認しながら、自分のスイングの課題を把握する。一方、そのスイングが本当に機能しているかは、アウトドアで実際の弾道を見ることで実感できる。つまり中上級者にとっても、スイングを作るならインドア、効果を確かめるならアウトドアという使い分けができる点に、ハイブリッドのメリットがあると考えています」
なるほど。
「初心者も中上級者も、インドアとアウトドアの両方を選べること自体が価値になる。レベルに関係なくハイブリッド型でスクールを運営することに意味があると思っています」
新たにアプリを導入したのもそのためですか?
「そうです。ハイブリッド型のスクールをより機能させるために、昨年2月から『Xビュー』というアプリをテスト導入しました。AIを活用してスイング動作やスイングプレーンを3Dで可視化・分析できるもので、インドアでのスイング作りをより客観的に、分かりやすくします。
日本のレッスンはグループレッスンが主流で、コーチが変わることで指導内容に差が出やすいという課題がありますが、共通の数値と映像を使えば、レッスンの質を揃えやすくなる。ハイブリッドの考え方と非常に相性が良いと感じました」
『Xビュー』とはどういうアプリなんですか?
「アップルやグーグルなどがオープンで提供しているプログラムを使わずに、自社独自開発のモーションキャプチャー機能を備えたアプリです。PGAショーで話を伺い、日本のスクールに活かせると思いました。
注目したのは日本とアメリカのレッスン構造の違いです。日本はPGAの理論をベースに、例えばスライス矯正でも、グリップから直すもしくは振り方を直すなど様々な方法があります。それゆえに教わるプロによって言っていることが全く違うという状況に陥りやすい。一方、アメリカはマンツーマンレッスンが主流なので、テクノロジーやデータを駆使し、分析結果からアプローチしていく。そうすると自然と同じレッスン、同じ言葉になりやすいんです」
レッスン内容を平準化できる?
「はい。当社のグループレッスンを例にすると、コーチが毎回違う。カルテで引き継ぎはしていますが限界があります。それは時に、『昨日のコーチと今日のコーチで言っていることが違う』という気持ちを生徒さんに抱かせ、退会を誘発してしまう。『Xビュー』を使うことでレッスンを共通化できれば、日本のゴルフレッスンが変わるのではと考えつきました。
ただ、当時のアプリはマンツーマンレッスンを前提に設計されているため、そのままでは日本のスクールには合わない。そこでメーカーに『日本のスクール用に、一緒に開発できないか』と相談したのです。先方も日本市場での展開を強く意識しており、当社のスクール現場の知見を反映させる方向で話が進みました」
グループレッスン向けに、どのような点が課題だったんですか?
「アメリカではプロが生徒のスイングを自ら撮影し、時間をかけて分析する形です。一方、当スクールでは50分で3名を同時に見るなど、限られた時間の中で効率良くレッスンを行う必要があります。その環境で同じ使い方をすると、どうしてもオペレーションが重くなってしまう。
そこで、日本のグループレッスンで必要な機能を整理し、スイングを検知して自動で撮影できること、分析項目をグループレッスンに必要なポイントに絞ることといった現場目線の要望を反映し、アプリを三脚に固定したまま使える仕様に改良してもらいました。レッスンの流れを止めることなく使えるようになり、生徒さんもコーチが回ってくるまでの間、自分で映像を確認できる。自主練の質も大幅に向上しました。こうした改良を重ねた結果、今年のPGAショーで『Xビュー グループレッスンバージョン』が正式にリリースされ、当社も導入契約を結ぶことができました」
確かに自主練では、レッスンで教わったことがうまく再現できなくなってしまうこともある。コーチと共通の基準を持てるのは効率的です。
「はい。グループレッスンに『Xビュー』を取り入れることで、レッスンと自主練のズレはかなり解消できると感じています。ただ一方で、アメリカのプライベートレッスンで行われている『Xビュー』の活用方法にも、大きな価値を感じました。
日本向けにはグループレッスン用として最適化を進めてきましたが、同時に、時間をかけてじっくりスイングを分析するマンツーマンレッスンとの相性の良さも改めて実感しました」
ということはプライベートレッスンにも活用する?
「はい。今春、RG水戸の2階を改装し、マンツーマン専用のプライベートレッスンスタジオを開設することにしました。アンプラスの倉地社長にご協力いただき、AIクラブトレーサー『FOCUS』、弾道測定器『GC3』、そしてアメリカで活用されているプライベートレッスン用『Xビュー』を完備します。
スクール生は月に1回、最新鋭のスイング解析システムを活用したスイング診断を受けることができます。別途料金はいただきますが、通常よりも割引価格にすることで、スクールに在籍する価値を高めたい。『月に一度、自分のスイングを可視化する』という習慣をつくり、テクノロジーを活用しながら継続的に上達できる環境を整えます。もちろん一般の方にも開放する予定です」
RG水戸は工房もあるので、フィッティング活用もできそうですね。
「はい。4月には中古クラブも取り扱う予定で、物販にも注力します」
練習場に打席外収入をもたらすスクールコンサルを開始
「それともう一つ。『Xビュー』を活用することで、ゴルフスクール事業をさらに成長させていきつつ、その中で確立できた成功モデルを、全国のゴルフ練習場にも提案していきたいと思っています」
と言うと?
「2階打席は、練習場にとって最もポテンシャルが眠っているスペースです。全体では稼働しているように見えても、2階だけを見ると空き時間が多い。そこをスクールとして活用すれば、十分に収益化できる余地があります。ただ、スクール運営にはノウハウが必要で、そこがハードルになっている練習場も少なくありません。そこで当社が、スクール運営そのものを引き受ける形で、2階打席を収益に変えるお手伝いをしていきます」
つまりスクールのコンサルをするということだと思いますが実績は?

「当社は練習場の経営コンサルティングも行っていますが、すでにスクール立ち上げの支援実績があります。関西地方のゴルフ練習場では、スクールの立ち上げをゼロからサポートし、1年間で約150名のスクール生を獲得できました。立ち上げ段階でしっかりと初速を作れたことで、安定した運営に繋がっています。こうした実績もあり、今年4月には中国地方のゴルフ練習場からスクール立ち上げの相談を受け、当社がサポートに入っています。
また、『スクール事業には興味があるが、ノウハウがないので任せたい』という声も増えており、今年4月からは福岡県でRGスクール福岡校が立ち上がる予定です。当社が運営面を担い、現場に入りながらスクール事業を軌道に乗せていきます。
さらに将来的には福岡でもインドアと屋外のハイブリッド型を展開し、これをRGスクールの基本モデルにしていきたいと考えています」
複数箇所にモデルケースがあるのは説得力がありますね。ただ、オーナーは本当に集客できるのかが心配だと思います。地域によってゴルファーの属性も全く異なるでしょう?
「そこは机上の空論ではなく、当社が実際の練習場運営をしているという点が大きいと思います」
集客戦略の具体策は?
「集客については、ウェブと現場の両面から取り組みます。ウェブでは、Instagramのショート動画などを活用してスクールの世界観や強みを伝えつつ、リスティング広告などでホームページへ誘導し、体験レッスンに繋げていきます。そこで得られたユーザーの動きや反応を分析し、改善を重ねながら集客の精度を高めていきます。
一方、現場では既に来場が取れている時間帯を活かし、プロが打席を回ってワンポイントアドバイスを行ったり、『飛ばしのコツを0番打席で教えます』『ダフリ・シャンクの簡単な直し方』といったテーマを絞った単発のレッスンイベントを開催し、まずは良さを体験してもらう。その上でスクールへ誘導していく形です。こうした手法は、これまでロイヤルグリーンで成果を上げてきた集客方法です。その実績を活かしながら、スクールの立ち上げから運営まで全力で伴走していきます。
ただ、事前調査の段階で厳しいと判断した場合は、その結果も正直に伝えます。それでも何とかしたいというオーナーさんには、スクールに限らず経営全体を支援していきたいと考えています」
今後、練習場に積極的に営業していくのですか?
「今のところ当社からのプッシュ営業は考えていません。リニューアルしてからGEWさんやほかのメディアに取り上げてもらい、多くの業界関係者にRG水戸を知ってもらえました。まずは問い合わせをしてくださった練習場のオーナーさんにお声がけしていきます」
コーチ育成プログラム「ロイヤルコーチキャンプ」
インドアも含めレッスンを主体としている施設は好調です。御社のスクール導入で救われるかもしれませんね。ただ、昨今は全体的にレッスンプロが不足しています。その対策はどうしますか?
「そこも『Xビュー』が鍵になると思います。先程言ったように『Xビュー』を使えばレッスン内容を平準化しやすい。つまり一定程度ゴルフがうまければ、PGAなどの資格がなくてもホスピタリティ採用ができるんです。私は資格ではなく人間力の高さがありテクノロジーを使いこなせるようになれば、十分コーチとして活躍できると思っています。現にアメリカのレッスンプロはそこに長けていますから」
つまり御社が一からコーチを育成するということですか?
「はい。2026年2月から『ロイヤルコーチキャンプ』という育成プログラムをスタートさせました。このキャンプは、単にティーチング技術を学ぶ場ではなく、ロイヤルグリーンのコーチメソッドはもちろん、お客様とどう関係性を築いていくか、そしてコーチ自身がどんな人生を歩んでいきたいのかを問い直すことを大切にしています。実際、ロイヤルグリーンでは、これまでティーチング経験のなかった人が、今では人気コーチとして活躍しています。技術だけでなく、人として信頼される力、つまり人間力が高いからこそだと思っています」
人を大切にする御社らしい考え方です。
「資格や肩書きよりも、人としてどう向き合えるかが重要です。ロイヤルコーチキャンプでは、その考え方をベースに、レッスンの在り方やお客様との向き合い方を体系的に学んでもらっています。参加者からの反響も非常に良く、これからこのキャンプを通じて、ロイヤルグリーンらしい人気プロを継続的に輩出していきたいと考えています。
そして将来的には、『Xビュー』の認定制度をロイヤルグリーンとして確立したい。プロが『Xビュー』をどう使い、どうレッスンに落とし込むのかをノウハウとして整理し、コーチキャンプの中でも学べるコンテンツにしていきます。一定の基準を満たした人には、『Xビュー認定コーチ』という称号を与えます。それが価値として広がれば、ゴルフスクール市場全体の活性化にも繋がると考えています」
よく分かりました。最後に未来像を聞かせて下さい。
「事業継続が難しい施設に対しては、賃貸借契約を結び、運営そのものを当社が引き受けるという選択肢も用意しています。例えば、過去5年で最も業績が良かった年の営業利益と役員報酬を合算し、それを12で割った金額を賃料の目安として設定する。そうすることで、オーナーさんは無理のない形で事業を手放し、施設は新たな形で生き残ることができる。
私たちは大切にしているのは、練習場をなくさないこと。
スクール、コンサル、そして運営の引き受けまで含めて、その施設にとって最善の形を一緒に考えていきたいと思っています」
救われる練習場が増えるかもしれない。期待しています。
AIアプリ『Xビュー』とは?

アイデアズラボ デビッド・チョイ事業開発ディレクター(右)
私の父は米ツアー8勝で韓国男子プロの、崔京周(チェ・キョンジュ=K・J・チョイ)です。当社の設立は2021年で従業員は20名。AIをベースにした画像解析アプリの開発が主業務です。本社はニューヨークで研究開発部門は台湾にあります。
『Xビュー』は両肩や肘、手首など13か所の関節をマークして、これを基点に各30の動きを認識し、合計390の身体動作を画像解析できます。加えて、高速で動くクラブの動きも取り込めますが、これは予測機能による当社独自の機能です。市場には無数の同業者がいますが、大半はオープンAIやアップル、グーグルなど大手のベースモデルを使っています。一方、当社は自社開発で特異性を出せるのが強みです。
『Xビュー』でレッスン現場の課題を解決レッスン事業部 菊池崚プロ

私も長年レッスンをしていますが、グループレッスンが主流のスクールでは毎回コーチが違うため、指導方法を統一することが難しいです。それゆえに生徒さんも迷ってしまうことが多い。当スクールは初心者が7割ですが、『Xビュー』を使うことで課題が可視化でき、レッスンと自主練が分かりやすいと好評です。上級者にも分析結果を見せると、「自分が思っていたよりもその形になっていないね」と驚かれることが多く、生徒さんと課題を共有でき、コーチ間での教え方にムラがなくなりました。

画像は『Xビュー』を使ってアドレスを直し、修正前後の動画を重ねたものです。前掲姿勢が改善され、明らかにカット軌道が直っていることが分かります。
今後当社では『Xビュー』を組み込んだコーチ育成プログラムを提供していきますが、レッスン未経験者をロイヤルグリーンスクールのプロとして育てるのが楽しみです。私は独立志向がありましたが、今は礒﨑社長とウィルトラストのパッションに賭けてみようと思っています。ロイヤルグリーンを日本のゴルフスクールのモデルに成長させたい。
安心のコーチ育成プログラムインストラクター 名知輝美さん

私は4年前にゴルフを始め、ロイヤルグリーンいわきのスクールに通っていました。その縁で昨年7月からウィルトラストで働き始めコーチになることを決意。会社がしっかりした育成制度を作り宿泊場所もバックアップしてくれたので、レッスン経験のない私も安心して取り組むことができました。研修中は菊池プロが丁寧に指導してくれ、1月から独り立ちして現場デビュー。目標はいわきのスクール生を100人にすること。育成制度を通して私みたいなコーチを増やしたいと思っています。
